
ライバルは自分 自分自身と向き合うことで もっと強くなれる
アスリートインタビュー#8
元サッカー日本代表 佐藤寿人
元日本代表で、サンフレッチェ広島を3度のリーグ優勝に導いたレジェンド、佐藤寿人さん。シュートを打ってゴールを決めるポジション「フォワード」として活躍し、Jリーグ通算220得点という歴代最多記録を持っています。これらの輝かしい活躍をなしとげるまでに、佐藤さんがどのようにサッカーと向き合い、何を考え行動してきたのかを聞きました。

|好きなことに集中できる環境に恵まれた
―サッカーとの出会いは?
佐藤 双子の兄・勇人がいます。ボールがあればふたりで遊べるからと、父がサッカーボールを用意してくれました。小学1年生で地元のスポーツ少年団に入りました。自前のグラウンドがあり、いつでも練習することができました。Jリーグが開幕した小学6年生の時、ジェフユナイテッド市原のユースに合格。父親が「やるなら成長できる場所で」と、クラブにかけあってセレクションの機会をつくってくれたんです。当時はまだ少なかったプロ指導者のもとでサッカーができました。
|考えて動いてこそ力になる
佐藤 子どものころから人とかかわるのが好きで、監督やコーチによく質問していました。監督は練習前にストレッチをする理由も教えてくれました。何も考えずに体を動かすのと、股関節を広げるためと意識して動かすのでは体への効き方が違います。考えて動く大切さを知りました。中学1年のときです。中学生のころからノートをつけていました。書いたことは今でも頭に残っています。情報が簡単に手に入らない時代だったので、監督が見せてくれた海外チームの試合のビデオを必死に見て頭に残し、どうやったらできるのかを考えて真似して、自分の技術にしていきました。三浦知良さんの真似をよくしていましたね。
―仲間の存在は?
佐藤 チームの中に、元日本代表の阿部勇樹がいました。彼は体もできていて、技術も高くて、プロになりたいという意識もとびぬけて高かった。この人と一緒にいたらうまくなれると純粋に思いました。いい仲間が自分を引っ張り上げてくれました。
―勉強との両立は?
佐藤 練習を終えて家につくのは夜の10時。食事の後に毎日1時間勉強していました。担任の先生が自分の将来の選択肢をつくるために勉強もしておくべきだと教えてくれました。
|自分から目をそらさない
―プロを意識したのは?
佐藤 高校2年生のとき、Uー16日本代表に選ばれました。世界の同世代の選手と闘い、自分の力を知りました。それまでは自分の得意なプレーを磨いてきたけど、レベルが高いところでは不得意が評価を下げることを実感。不得意に目をつむっていてはうまくなれないと分かりました。
―強くなるために必要なことは?
佐藤 子どものころから「ゴールを決めたい」という気持ちが強く、引退するまでずっと変わりませんでした。誰かと比べるのではなく、自分がもっとうまくゴールを決めるためにどうすればいいのかを考えてきました。だから自分のライバルは自分。いつも言い聞かせている言葉は「己に勝つ」です。フォワードというポジションに、別の人が選ばれることもありました。「あいつがミスしてくれたら」「違うチームだったら」と思ったって、自分はうまくはならない。練習してうまくなるしかないんです。プロになって、この思いがさらに強くなりました。みんなも人と比べないで、自分がどうなのかをしっかり見てほしい。できないことをできるようにしていくだけ。自分に勝っていこう!

今日は100%やれたのか
引退するまでストライカーとして活躍をつづけた佐藤さん。歴代最多のゴールという輝かしい記録にいたる道のりには、何度も悩んで、失敗して、乗り越えてきた日々があったそうです。支えとなった言葉が「己に勝つ」。意識を常に自分に向けて成長を続けることができたと話します。そんな佐藤さんインタビューの続きを紹介します。

―「己に勝つ」との出会いは?
佐藤 サッカー日本代表の基礎をつくり、日 本サッカーリーグの立ち上げにも力を 注いだ「日本サッカーの父」といわれる デットマール・クラマーさんの言葉に 由来しています。
「自分自身の闘いに勝 つこと、それが最も偉大な勝利である」 という言葉です。 プロは常に誰かと比較されます。同 じポジションの仲間が結果を出したとき、意識が自分ではなく外に向いている とひがみや妬みが生まれ、仲間が活躍し ても素直に喜べなくなります。
仲間の活躍は努力したその選手の結果で、自分 とは関係ないことです。彼がミスをし ても移籍をしても、自分が選ばれるわけ ではありません。結局は自分が結果を 出すしかなく、「練習するしかない」と いう考えにたどり着きます。 意識を内(自分)に向けることは、チー ムの強さにもつながります。
意識の矢印が外( 自分以外の相手)に向いている 11人 と 、 内 に 向 い て い る 1 1人が試合をし たとします。全員が外を向いている チームは、人のミスを探すことに必死です。内を向いているチームは、一人一人 が「自分がこのミスを解決できたので はないか」「こうすればミスを防げる!」 と次につなげていくことができます。
意識が内に向いている選手が多いほど、 信頼関係が深まり、さらに強くなってい きます。個人もチームも成長していく ことは、間違いなく勝ちにつながります。

―そのほか、成長し続けるために意識してきたことは?
佐藤 シュートの練習で、ボールが止まった状態で正確にできるようになったら、次はボールが動いている状態で正確にできるようになるまで練習します。できる環境の中だけに身を置いていると、その先の成長はないと思っています。自らできない環境をつくり、それをできるようになるまで練習します。
一つひとつ階段を上って行くような感じです。クラマーさんの言葉のおかげで、いつも目の前に鏡があるような気持ちで「今日は100%やれたのか」と問いかけてきました。だから21年もプロができたのだと思っています。
もう一つ、基礎を身に付けることがとても大事です。2024年から、広島市にサッカースクール「レガーレ広島」を元プロ選手の山岸智さんや清水航平さんと立ち上げ、子どもたちに指導をしています。教える立場になってより感じるのは、当たり前のことを当たり前にできるようになることの大切さです。
基礎ができてこそ応用ができ、選択肢が広がります。天才的なプレーは偶然でも幸運でもありません。基礎ができいて、さらに蹴り方やボールの回転などあげればきりがないポイント一つ一つに対してどうすればいいか考え、トライして修正してたどり着いたプレーです。サッカーに限らずどんなことにも共通して言えますが、練習でできないことは実践できません。技術に天井はありません。
もっとできることはないかと考えてトライして、成功につなげていくしかありません。今でも、中高時代にもっとできることがあったのではないかと思うことがあります。

―これからチャレンジしたいことは?
僕はタイミングよく、指導者やサッカーをする環境に恵まれました。クラブがグラウンドを持っていたから練習できたし、なければ練習量が少なくなったはず。
そうなると、クラブに入れていたか、プロになれていたかも分かりません。育成期間の一つ一つが将来を変えます。1回の「不合格」というジャッジで、サッカーの道からはじかれてしまった選手もいたかもしれません。
全国各地の子どもたちを指導する中で、都市と地方の環境の差を感じています。資金も人材も都市に集まりがちです。学校教育の現場で、サッカーを続けることが難しくなっている状況もあります。
そして、スポーツを突き詰めることがお金がある人の特権になってはいけない。プレーをする機会や場所、いい指導を受けるチャンスは、多くの子どもたちに同じように与えられるべきです。
こうした環境をつくることは僕たち大人のつとめだと思っています。広島出身の世界で戦う選手は、まだそんなに多くありません。広島で生まれ育った選手が、日本代表として世界で活躍する景色を見てみたい。未来のプロサッカー選手を出すことが、僕の新しいチャレンジです。

元サッカー日本代表
佐藤寿人
1982年生まれ、埼玉県出身。2000年ジェフ市原ユースからトップ昇格。プロとして21年活躍。サンフレッチェ広島時代にはリーグ3度の優勝、得点王とMVPを獲得。歴代最多のJリーグ通算220得点。キャリア通算724試合278得点。元日本代表。
\元プロサッカー選手が教えるサッカースクール/ レガーレ広島
LEGARE FC HIROSHIMA
U10~12世代に重要な、直接的スキル【ボールを扱う・身体を扱う】と間接的スキル【洞察力・戦術的思考力・コミュニケーション力】を個人レベルで高めていくことで、トップ選手へと繋がる成長プロセスへと導きます。


毎週月曜日/東広島ドリームフィールド
小学3年~4年生クラス 18:10~19:30
小学5年~6年生クラス 18:10~19:30
中学1年~3年生クラス 19:40~21:00
毎週水曜日/フタバフットボールフィールド
小学3年~4年生クラス 19:10~20:30
小学5年~6年生クラス 19:10~20:30
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